第4章 良心的な投資信託の選び方

安いほうがいい! 販売手数料と信託報酬

僕自身、投資信託を選ぶ上で重要視するのがコスト、つまり販売手数料と信託報酬です。ここではなぜそんなにコストが大事なのかについて説明しましょう。

販売手数料は、投資信託を購入するときに一度だけ支払うコストです。一方、信託報酬は毎年払い続けるコストです。つまり、ある投資信託を購入して10年間保有したならば、販売手数料は1回支払い、信託報酬と保管費用は10回支払うことになります。

ですから、コストのうちもっとも重視すべきなのは信託報酬、ということになります。

増益の唯一確実な手段は信託報酬を減らすこと

僕たちが投資信託から受け取る運用実績とは、運用結果から信託報酬を差し引いたものです。

(運用結果) - (信託報酬) = 僕たちが受け取る運用実績

では、どうしたら僕たちが受け取る運用実績を増やすことができるでしょうか?

例えば、高い信託報酬を設定して、運用会社がコストを掛けて調査や研究を盛んに行えば運用結果は向上するでしょうか? 少し考えれば分かりますが、信託報酬が高ければ調査や研究コストがたくさんかけられる、というわけではありません。例えば、信託報酬率が1%で純資産が100億円の投資信託よりも、信託報酬率が0.8%で純資産が200億円の投資信託のほうが、運用会社にとってはより多くの信託報酬が得られるので、コストをかけた運用ができるはずです。

だからといって、純資産の大きな投資信託のほうがつねによい実績を残すわけではありませんね。ということは、信託報酬が豊富だからといって、必ずしも実績が良くなるとは限らないことが分かります。

そもそも根本的に、銘柄や市場の調査研究によって運用結果が向上するのか、という問いには、数多くの否定的な意見とデータが存在します。世の中には毎年莫大なコストを掛けて運用している投資信託が数多く存在しますが、何年、何十年にも渡って平均よりもつねに高い実績をあげている投資信託はほとんど存在しません。

信託報酬が高いほうが高級な運用をしてくれる、あるいはよい実績が出やすい、と考えるのは、たいした根拠がないといえるでしょう。

よい実績を残す投資信託を予想できるか?

高い信託報酬を払っても運用結果を向上させられないのならば、僕たちができることといえば、多くの投資信託の中から「よりよい実績を出してくれる投資信託を選ぶ」ことだけです。

しかし詳細な議論は省きますが、残念ながらどれがよい実績を残す投資信託なのか、確実に、もしくは高い確率で予想する方法はありません。

雑誌には「過去1年間や3年間で実績のよかった投資信託ランキング」といったものが掲載されていますが、過去の実績がよいから、これからの実績もよいとはいえません。逆に、旬を過ぎてしまったのかもしれません。

書籍「ウォール街のランダム・ウォーカー」(バートン・マルキール 著)では、1970年代、1980年代、1990年代にそれぞれ花形だった投資信託たちが、次の10年では無残な結果を残している、というデータを紹介しています。ほんの一握りの例外を除けば、勝ち続ける投資信託はない、というのが冷静な見方だと思います。

唯一確実な手段は「信託報酬を減らすこと」

将来の運用結果は約束されていない一方、差し引かれる信託報酬だけはあらかじめ決められています。ということは、実績を向上させるための唯一でしかも確実な手段は、信託報酬を減らすことです。

いくつかの似たような投資信託があったとき、どれがよい運用結果を出してくれるかは予想できません。しかし、信託報酬の分だけ僕たちが受け取る実績が確実に減るのだとしたら、それが少ないほうが、僕たちが受け取る利益の期待値は高まるといえるでしょう。

販売手数料も安いほうがいい

販売手数料も安いほうがいいのは同じです。販売手数料が高いほうがよい実績が残せる、なんてことはまったくありません。

最近では、同じ投資信託が複数の銀行や証券会社で買えるようになってきましたが、手数料の高いところで買っても、安いところで買っても当然ながら投資信託の実績は同じですし、安いところは説明が手抜きになる、なんてこともありません(担当者による知識の差の方が大きいはずです)。

最近では、販売手数料がゼロ円の「ノーロード」と呼ばれる投資信託の販売も増えてきました。できればノーロードの投資信託を選びたいものです。

第4章 良心的な投資信託の選び方
安いほうがいい! 販売手数料と信託報酬
(最終更新 2008年8月17日)

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