第6章 アセットアロケーションとポートフォリオを設計する

アセットアロケーションのサンプル集

いきなり自分でアセットアロケーションを考えるよりも、まずは、雑誌や書籍やインターネットで紹介しているさまざまなアセットアロケーションの例を見て、参考にしてみましょう。

非常にシンプルな山崎氏、期待リターン7.45%

最初に紹介するのは、おそらく最もシンプルなアセットアロケーションです。金融評論家の山崎元氏が、楽天証券のWebサイトで連載している「山崎元ホンネの投資教室」の2008年1月18日に掲載された「第七十回 ETFを使った個人資産運用~簡便法~」に掲載されたアセットアロケーションを紹介しましょう。

年金積立金管理運用独立行政法人の発表した2007年のデータをもとに、将来のデータの予想を加味し、年間7.45%の期待リターンを想定して、リスクとリターンとのバランスが最適になるように山崎氏が計算したそうです。その結果、国内株式を42%、海外株式を58%とするアセットアロケーションを提案しています。

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500万円あったら内藤氏は期待リターン7%

次に紹介するのは、マネックス・ユニバーシティ 代表取締役社長 内藤 忍が提案するアセットアロケーション。マネックス証券のWebサイトに掲載されている、「もし500万円あったら」というコーナーでアセットアロケーションを紹介しています。

それによると、日本株が30%、国内債券(個人向け国債)が10%、外国株式が20%、外国債券が20%、そしてREITや新興国などで残りの20%、としています。このアセットアロケーションで、資産が大幅に減少するリスクを防ぎながら、年平均7%程度のリターンを目標とするそうです。

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廣澤氏は50万円で期待リターン6~7%を目指す

同じくマネックス証券のWebサイトで、50万円でのアセットアロケーションを提案しているのが、マネックス・ユニバーシティ 副社長の廣澤知子氏。日本株式が30%、国内債券(個人向け国債)が20%、海外株式が26%、海外債券が24%と、比較的シンプルな構成になっています。これで期待リターンとして6%~7%を目指すとのこと。

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米国人向けのアセットアロケーションは株式重視

続いては、書籍「ウォール街のランダムウォーク」(バートン・マルキール著)の中で紹介されているアセットアロケーションを紹介しましょう。本の中では、年代ごとに適したアセットアロケーションが4種類ほど紹介されていますが、「30代後半から40代初めの投資家」用に提案されたアセットアロケーションは、株式が60%、債券が25%、不動産(REIT)が10%、現金が5%となっています。ただしこの著者は米国の読者を想定しているため、日本人の僕たちとしては外国株式や外国債券に置き換えて考えることになるでしょう。

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年金の運用は慎重に債券中心

最後は、僕たちの厚生年金と国民年金を運用している国内最大の運用機関である、年金を年金積立金管理運用独立行政法人のアセットアロケーションを見てみましょう。国内債券が67%、国内株式が11%、外国債券が8%、外国株式が9%、そして短期資産が5%となっています。期待リターンは3.37%と低めに設定して、リスクを抑えた慎重なアセットアロケーションになっていることが分かります。

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目的によってさまざまなアセットアロケーションがある

見てきたように、金額やリスクのとり方、将来への展望などの違いによってさまざまなアセットアロケーションがあることがお分かりいただけたと思います。理想的なアセットアロケーションは1つではなく、人それぞれに存在するといえるでしょう。

ところで、上記のいくつかのアセットアロケーションに関して、期待リターンやリスクが明示されていましたね。これは、過去のデータを用いて現代ポートフォリオ理論の数式に当てはめれば、将来の期待リターンやリスクが予想できるのです。

この、アセットアロケーションから期待リスクとリターンを計算するツールを、「投資信託の道具箱|ファンドの海」で提供しています。アセットアロケーションの変化に応じて期待リターンとリスクが変わっていくのを試してみてください。

アセットアロケーションを設計するには、こうした期待リターンやリスクを自分のニーズに合わせていくことが合理的な方法といえるでしょう。

第6章 アセットアロケーションとポートフォリオを設計する
アセットアロケーションのサンプル集
(最終更新 2008年8月30日)

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