第4章 良心的な投資信託の選び方
コラム:じゃあ毎月分配型にメリットはないの?
毎月分配型の投資信託は複利の効果を得られないため、長期投資に向いていないと書きました。では毎月分配型にメリットはないのでしょうか? なぜ毎月分配型はこんなに人気があるのでしょうか? 日本でもっとも売れているタイプの投資信託、毎月分配型についてもう少し考えて見ます。
毎月分配型を複利にしてみる
毎月分配型を長期投資に用いることはできないのでしょうか? 例えば、分配金を自動的に再投資に回して元本を増やしていけば、複利でお金が増えそうです。そうすれば長期投資にも使えるかもしれません。
実際にこの複利効果を狙って、毎月分配型の投資信託にも自動再投資のコースを設定している証券会社もあります。
理屈の上では、毎月分配型でも、年に一度の分配でも、分配金の全額を再投資に回して元本に組み入れれば、得られる複利の効果は同じはずです。しかし現実には、毎月分配型で再投資を行うよりも、年に一度の分配を再投資する投資信託のほうが高い複利の効果が得られます。
なぜなら分配金には税金がかかるため、全額を再投資には回せないのです。現実には分配金には10%の税金がかかりますので(2008年現在)、再投資に回せるのは分配金の90%になります。
とはいえ、分配金を自動的に再投資して運用するのならば、毎月分配型にする必要はないわけで、毎月決算している投資信託より、年に一度決算がある投資信託を選んだほうが、コストが安く済むはずです。
じゃあ毎月分配型にメリットはないの?
では毎月分配型にはどんなメリットがあるのでしょうか? 僕の意見では、長期投資家には毎月分配型のメリットはまったくないと思います。
よく、毎月分配型は相場の下降局面で大きく下げにくい、という特徴が挙げられることがありますが、それは分配金を出して元本がつねに小さく抑えらているためで、複利の効果を得られないことの裏返しであって、大きなメリットといえるほどではないと思います。
毎月分配型は、例えば老後に貯金を取り崩しながら生活するよりは、運用しつつ現金を受け取りたい、といった人たちに最も向いています。相場の下降局面でも大きく下げにくい点も、安心感があるといえるでしょう。あるいは、貯金を趣味にしている人によくあるような、少しずつお金が増えていくのを見る方が安心する、といった嗜好の方にも向いているかもしれません。
毎月分配型の人気の理由は?
ではなぜ、毎月分配型は非常に人気があるのでしょう? それは、人間が不確定な将来のお金よりも、目の前の確実なお金を好む傾向にあるからだそうです。これまで計算したように、合理的に考えれば、お金を増やす手段として毎月分配型はベストではありません。しかし、毎月少しずつでも増えたお金が分配金としてはっきりと分かるほうを多くの人が好むことが、毎月分配型の人気の背景にあるようです。
こうした、必ずしも合理的ではない人間の行動は、「行動ファイナンス理論」という名前で、新しい経済理論の1つとして最近盛んに研究が行われています。
第4章 良心的な投資信託の選び方
コラム:じゃあ毎月分配型にメリットはないの?
(最終更新 2008年8月17日)
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