第2章 投資信託を買う前に知っておきたいこと

分散投資はリスクを効果的に小さくする

投資したお金の大半を失ってしまう、あるいはそこまで悪くないとしても、投資したお金が減ってしまう、といった失敗は誰でも避けたいものです。

特に僕たち個人投資家にとって、投資するお金は大事なもの。「失敗したからやり直し」というわけにはいきません。投資に失敗する可能性をいかに小さくするか、つまりリスクをいかに小さくするかは重要なことです。

安全な資産に投資する

リスクの小さな投資をいちばん簡単に行う方法は、安全な金融商品に投資することでしょう。銀行の定期預金は元本が保証されていますし、個人向け国債も元本を国が保証してくれます。投資信託なら、MRFやMMFでは元本保証こそありませんが、現実的には元本割れの可能性はほとんどありません。

こうした安全な金融商品への投資なら、元本を下回る危険性はまずなく、非常に小さいリスクで資産を運用することができます。

ただしこうした金融商品のリターンは、当然ながらとても小さくなっています。安全な金融所品への投資は失敗する可能性を小さくできますが、得られる利益もそれなりなのです。

そこでもう1つ、リスクを効果的に減らす方法があります。それが分散投資です。

分散投資でリスクを低減する

株式は値動きが大きい、すなわちリスクの大きい金融商品です。しかもそれぞれの銘柄ごとに、業績や評判などさまざまな要素によって株価が上下します。

ところが、こうした株式の複数銘柄をうまく組み合わせて投資すると、お互いにリスクを打ち消し合い、値動きの幅が小さくなることが分かっています。つまり、株価がいきなり半分になるようなことが起こりにくくなるのです。

下記のグラフでも分かるように、こうした複数の株式の組み合わせをうまく増やしていけば、個別の株式の株価が上下することによる影響は小さくなっていきます(一方で、リスクを打ち消しあわず、かえって大きくなる銘柄の組み合わせも存在します)。

fig_bunsantoushi.png

しかも、この方法でリスクを小さくしていっても、うまい組み合わせを選べばリターンはそれほど小さくならないことが分かっています。

これが複数の銘柄に投資する分散投資の効果です。分散投資はリターンをあまり小さくせずに、うまくリスクだけをを小さくするための非常に効果的な手段です。

もちろん、リスクが小さくなったとはいえ株式への投資には元本保証がありませんから、市場全体が落ち込んだときには元本を割り込んでいくことは十分にあります。しかし、それは将来お金が大きく増えるというリターンを期待するために、必要最小限のリスクをとっている、ということなのです。

このリスクをとりたくなければ、前述の元本保証の金融商品を買うという選択をすればよいのです。

投資信託なら誰でも分散投資

投資信託は、僕たちに代わってプロが分散投資をしてくれる金融商品です。その投資信託のテーマが「日本の優良企業」ならば、何十社、何百社という日本の優良企業に投資をしますし、「世界の安全な債権」ならば米国や欧州など先進国が発行する数多くの債券に投資をしてくれます。

もしも個人でさまざまな株式や債権を購入して分散投資を実現しようとすれば、間違いなく数百万円単位の金額と、面倒な手続きが必要になるでしょう。さらに投資先を海外にまで広げようとすれば、個人では買うことも難しくなってきます。

しかし投資信託ならば、そんな手間は不要。少額で購入でき、簡単に分散投資を実現できるのです。

投資信託を活用することで僕たち個人投資家も手軽に分散投資を行い、リスクをできるだけ小さくしながらもリターンは確保し、投資に失敗する確率を下げることができるのです。

ただし、もしもあなたが「分散投資のリターンには満足できない。集中投資で思い切りリスクをとりに行きたい」と考えるのであれば、投資信託はお勧めすべき金融商品ではありませんね。

第2章 投資信託を買う前に知っておきたいこと
分散投資はリスクを効果的に小さくする
(最終更新 2008年8月18日)

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