第2章 投資信託を買う前に知っておきたいこと

基準価額と分配金は高い方がいいのか?

株式に毎日「株価」が付くように、投資信託も毎日「基準価額」が付いています。基準価額は、その投資信託の1口あたりの価値がいくらなのかを示しています。

基準価額はYahoo!やモーニングスターなどのWebサイトで毎日公開されています。例として、Yahoo!で公開されているフィデリティ・日本成長株・ファンドの基準価額のグラフを見てみましょう。毎日変動しているのが分かります。

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基本的には、この基準価額が安いときに投資信託を購入し、高いときに解約すれば、投資信託でお金を増やすことができます。

基準価額が上がると保有者は嬉しい

例えば、基準価額が1万円のときに1口購入し、その後、基準価額が3万円になったときに解約すれば、3万円になって戻ってくるので、差し引き2万円の儲けになります。このように、基準価額は投資信託を売買するときの1口あたりの値段のことで、すでにその投資信託を保有している人は、基準価額が上がるほど儲けが大きくなります。

しかし、基準価額が上がると困る人もいます。これからその投資信託を買おうとしている人たちです。もしも基準価額が3万円に上がってしまったら、1口買うのにも3万円のお金を用意しなくてはなりません。少額で購入しにくくなり、不便です。

同様に、投資信託を売りたい販売会社や運用会社も、高くて買いにくい商品になってしまうのは困ります。そこで、運用会社は年に数回、投資信託の決算期に基準価額を下げることができます。

決算で分配金を出すと基準価額が下がる

投資信託ではあらかじめ、決算を行う決算期が決めてあります。年に1回のものもあれば、毎月決算を行う投資信託もあります。決算期がくると、運用会社はそれまでの運用結果をまとめ、今後の方針などを記した運用報告書を発行します。

と同時に、決算のときに分配金を出すことができます。例えば、基準価額が3万円の投資信託では、2万円の分配金を出すことで基準価額が1万円に下がるのです。

分配金は投資信託の保有者に支払われます。先ほどの例では、1口あたり2万円の分配金が支払われることになります。つまり保有者は、1口3万円の投資信託の代わりに、1口1万円の投資信託と2万円の分配金を手にします(税金については後述します)。

こうして運用会社は決算のときに分配金を出すことで基準価額を下げ、買いやすい値段まで下げることができるのです。

分配金からは税金が引かれることを忘れずに

ただし、僕たちが受け取る分配金には税金がかかります。1万円で買った投資信託の基準価額が3万円になって、決算のときに2万円の分配金を受け取る場合、2万円の儲けに対して10%の税金がかかりますから、実際に受け取る額は1万8000円になります。

そうすると、分配金が出る前は1口3万円を保有していたのに、分配金が出たあとは1口1万円+分配金1万8000円=2万8000円と、減ってしまうのです。

保有者にとっては、分配金はできるだけ出さないでくれた方が節税になって嬉しいのです。一方で、これから投資信託を買う人にとっては、分配金を出して安くなった基準価額のほうが買いやすいのです。

第2章 投資信託を買う前に知っておきたいこと
基準価額と分配金は高い方がいいのか?
(最終更新 2008年8月16日)

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