第6章 アセットアロケーションとポートフォリオを設計する
実は、いちばん大事なのがアセットアロケーション
これまで投資信託の紹介や、良心的な投資信託の選び方などを紹介してきました。それもこれも、すべて余計なコストとリスクを抑えてリターンを得るためです。
しかし、投資信託で資産運用するにあたり、実はリターンにとっていちばん重要なのが、これから紹介するアセットアロケーションなのです。
アセットアロケーションはどれだけ重要なのか?
最初にこのことを学術的に研究し発表した論文は、米国の1986年にブリンソン、フッド、ビーバウワーらが1986年に発表した「Determinants of Portfolio Performance」(ポートフォリオ・パフォーマンスの決定要因)でした。
米国の年金運用データを分析したこの論文では、株式や債券など、ある程度の分散投資が行われているポートフォリオでは、全体のリターンを決定するもっとも大事な要素は、投資する株式や債券の銘柄ではなく、投資のタイミングでもなく、どの資産にどれだけの割合で投資するかというアセットアロケーションであると、結論付けています。
しかも、アセットアロケーションはリターンの93.6%を決定するという、圧倒的な重要度がこの論文によって示されています。
この論文の発表をきっかけに、アセットアロケーションの重要度に関する議論が専門家のあいだで巻き起こりました。
議論の中ではこの論文への反対意見なども発表されましたが、2003年には、インデックスファンドで知られるバンガードグループが「ポートフォリオ・パフォーマンスの源泉:揺るぎないアセットアロケーションの重要性」という調査結果を発表。"平均で月間リターンの変化量の76.6%がアセットアロケーションによるもの"と結論付けました。
現在では、ポートフォリオにおけるアセットアロケーションの重要性が8割なのか9割なのかという数字に多少の開きはありますが、いずれにせよアセットアロケーションの重要性が非常に高いことは専門家のあいだでも共通認識となり、アセットアロケーションの重要性が広く説かれるようになりました。
マネックスユニバーシティ社長の内藤忍氏も、自著の帯で「投資リターンの80%はアセット・アロケーションで決まる!」と訴えています(ただしこの帯は初版に使われていたもので、現在販売されている新版では、別の帯に変わっているようです)。
投資信託は手数料の安いインデックス型で十分ではないのか
これを投資信託での資産運用に置き換えて考えて見ましょう。そうすると、どの投資信託を選ぶかはたいして重要ではなくなってきます。大事なのは、国内株式や外国株式、外国債券といった資産クラスにそれぞれいくらずつ資金を配分するのか、という、アセットアロケーションなのです。
アセットアロケーションがリターンの8割から9割を決定するのであれば、それを考え実行することに手間や時間をつかうべきで、アクティブ型がいいのか? インデックス型がいいのか? どの投資信託がいいのかといった選択には、たいした手間をかける必要はないのかもしれません。
次のページでは、具体的なアセットアロケーションの例をみていくことにしましょう。
[関連記事]
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第6章 アセットアロケーションとポートフォリオを設計する
実は、いちばん大事なのがアセットアロケーション
(最終更新 2008年8月19日)
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