第2章 投資信託を買う前に知っておきたいこと
コラム:信託報酬の内訳を見てみる
「投資信託の2大コスト、販売手数料と信託報酬」の説明のところで、おおむね信託報酬の半分が運用会社に、4割が販売会社に、1割が信託銀行に配分される、と書きました。ここでは実際の信託報酬の内訳がどうなっているのか見てみることにしましょう。
1つ目の例は、日本で最も売れている投資信託「グローバル・ソブリン・オープン(毎月分配型」(以下「グロソブ」)です。
信託報酬が運用会社や販売会社にどう配分されるかは、グロソブの目論見書に記載されています。グロソブの信託報酬は1.25%(税別)。この配分がどうなっているのか、目論見書を見てみましょう。目論見書の図15に、信託報酬の内訳が掲載されています。
予備知識として、委託会社とはグロソブを運用をしている「国際投信投資顧問株式会社」のこと、販売会社は、グロソブを販売している証券会社や銀行などです。そして受託会社は、信託財産の管理をしている「りそな信託銀行株式会社」のことです。
さて、これを見ると次のようなことが分かります。
信託報酬の配分は売り上げ額ごとにきめこまかく設定されています。ある販売会社ではグロソブをあまり売らず、100億円の売り上げだった場合、100億円の0.85%(税別、以下同じ)が運用会社である国際投信の受け取り分となり、販売会社には100億円の0.35%が受け取り分となります。
この販売会社ががんばってあと200億円グロソブ売った(合計300億円を販売)とすると、その200億円については、純資産の0.75%が運用会社である国際投信の受け取り分となり、0.45%が販売会社の受け取り分となります。
このように、グロソブの場合は販売会社ががんばって売れば売るほど、信託報酬の取り分の比率が高くなるように設定されています。
もう1つ例を見てみましょう。国内の株式に投資する投資信託としてよく知られる「フィデリティ・日本成長株・ファンド」です。
こちらも目論見書に信託報酬の配分が記載されています。さっそく見てみましょう。
グロソブに比べると非常にシンプルです。金額にかかわらず、信託報酬1.53%(税別、以下同じ)のうち、0.73%を運用会社であるフィデリティが受け取り、0.70%を販売会社が受け取ることになります。一般的にはこのようなシンプルな配分になっている投資信託のほうが多いようです。
このように信託報酬とは運用にかかるコストだけでなく、販売会社に対しても支払われています。
販売会社は、あなたにあった投資信託を提案して販売するより、たくさん信託報酬が受け取れる投資信託を販売するほうが儲かります。
もしも銀行や証券会社の窓口で「この投資信託はいかがですか?」と勧められたとしたら、それはあなたの要求に合っているからではなく、その投資信託を売ったほうが販売会社が儲かるから、かもしれませんよね? なんてことを、少し気にしておいたほうがいいかもしれません。
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(最終更新 2008年8月17日)
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